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執筆者の写真S.A.L. 広報局

【スタツア実録 #1】2024春 タイエレファントスタディーツアー 

「動物園やペットショップで思う、「かわいい」は歪んだ感情ではないか。」

(15期 タイエレST、PC 森脇千莉)


私は慶應義塾大学公認学生団体S.A.L.の一員として、この3月にタイスタディーツアーを企画し、約一ヶ月間をかけて渡航した。テーマは観光産業と動物愛護のトレードオフ。この記事ではそのスタディーツアーで見たこと、考えたことを書き残す。


2024春 タイエレファントスタディーツアーメンバー



国とテーマを決めるきっかけは、私の動物に対する「かわいい」という意識が歪んでいるのかもしれないと思ったことにある。昨年、友だちと開店したばかりのアニマルカフェに行った。モルモットやチンチラ、蛇などと触れ合うことができるその施設では、動物たちがそれぞれの個別のケージに入れられていた。ふれあいたい動物を指名すると、スタッフが自分の膝の上に乗せてくれた。私が指名したのはゲージに入ったモルモット。至福の時間だった。


しばらくして、もう一度同じカフェに行きまたあのモルモットを探した。私の「推し」は、相変わらず同じゲージの中にいた。


同じようにスタッフに抱き抱えられ私の膝の上に乗せられ、前と同じようにそっと触れた。でも私の推しの様子はおかしかった。ちょっと触れただけでブルブル震えている。


ここにいる子たちは、ずっとこの箱と誰かの膝の上を行き来する生活だったのだろうか。誰かが何かしたせいで、このモルモットは人間の膝の上でブルブルと震えるようになってしまったのか。これからも、このケージと誰かの膝を行き来して人生を終えるのだろうか。「かわいい」の裏から、「かわいそう」という感情が押し寄せてきた。


彼らは動物らしい快適な生活を送ることが出来ているのだろうか。

人間はその環境を提供することが出来ているのだろうか。


人間が動物に対してこのようなかわいいやかわいそうなどの感情を持つことを、動物愛護というらしい。そして動物たちが「らしく」生きることを動物福祉というらしい。少し調べただけで、アニマルカフェが動物福祉的に批判されている記事がたくさん見つかった。その他にもペットショップやホームセンターにおける家庭動物、畜産動物、アニマルカフェの動物たちの飼育環境の中には劣悪なものも少なくないらしかった。


人間は動物たちの「らしい」環境を奪っているかもしれない。


そして、そんな観点から注目が集まっている産業が外国にも存在していた。


それが、タイのゾウ乗り観光だった。タイ国内には多くのゾウがいて、その多くが人間とともに暮らしている飼育ゾウである。この飼育ゾウを利用したゾウ乗り観光が動物福祉の観点から虐待行為であると大きな批判を浴びていた。


ゾウ乗り観光のゾウたちは、40度にものぼる気温の中で棒を持った象使いと観光客を背中に乗せ、繰り返し同じコースを歩き続けるらしい。ずっと人間を乗せていたことで、背骨が変形してしまったゾウもいるらしい。タイのゾウを取り上げる多くの記事の中で、声高に象乗り体験を禁止するように訴えられていた。


もしかしたら飼育ゾウたちは、本当は水を飲みたいのかもしれない。ごはんを食べたいのかもしれない。ここを抜け出してどこか違うところにいきたいのかもしれない。タイの象こそ、人間の管理下に置かれていることで、「らしい」行動ができていないのではないか。


いくつかの記事をみてから、どんなゾウ乗り体験の映像をみても、どんな資料を読んでも、ゾウがかわいそうで、動物福祉的に守られていないようにしか見えなくなった。


確かに、象使いたちにとってゾウは生活の手段である。ゾウがいなければ、ゾウに乗る観光客がいなければ、彼らは暮らしていくことが出来ない。タイのGDPに占める観光産業の割合は、日本の約10倍。ゾウは彼らの背に多くの人の明日の生活をも背負っている。


それでも。私はゾウには乗らない。そう誓って、このスタディーツアーを立案した。


[2/5]へ続く



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