S.A.L.のプロジェクトの一つであるBACKPACKERのプロジェクトチーフ(PC)であり、BACKPACKER編集長である吉益さんに、BACKPACKERに対する熱い思いや彼女自身の考え方に迫りました!
Q.なぜBACKPACKERというプロジェクトを選んだのですか?
A.1年生の時は、サルゼミとBACKPACKERに入っていました。BACKPACKERを選んだきっかけは塾の祝賀会で同じグループになった高校の先輩とのやり取りです。サークルの話題になった時、写真を撮ることも文章を書くことも好きだと話したところ、先輩に勧められてS.A.Lに入ったので、もともと雑誌プロジェクトには関わりたいと思っていました。
Q.S.A.Lには3つの雑誌プロジェクト(BACKPACKER、HearTo、Magadipita)がありますが、その中からBACKPACKERを選んだ理由はなんですか?
A.1年生の夏に行ったスタツア(スタディツアー)で一緒だった先輩がBACKPACKERの編集長だったのもあるかもしれません。
Q.その先輩に勧められたのでしょうか?自分がBACKPACKERに携わっている想像がついた、といったこともありますか?
A.先輩のお話から、こだわりなどを垣間見ることが出来て、楽しそうだなと感じたこともありますが、他の雑誌プロジェクトよりも募集が早かったこともあります。夏頃から雑誌プロジェクトに入りたいと思っていたので、とにかく早く雑誌を作りたい気持ちから決めました。「文章書きなよ!」みたいなことを先輩に言われたかもしれません。(笑)
Q.ずばり、BACKPACKERに携わる上で、「やりがい」にしていることは何でしょうか?
A.スパっといえたらカッコいいですけど、一言でい言い表すのは難しいです…。でも、一番は、「突き詰めてこだわる楽しさ」であるような気がしています。人によるんだと思うんですけど、私は「こだわること」に楽しさを見出しているんだと思います。
Q.確かに、プロジェクトに「参加すること」自体に楽しさを感じる人もいるのかなと思いますが、吉益さんの場合は最初から完成度を求めているということですかね?
A.「0から1を生み出す」作業よりも、「1を5に、5から10にする」過程、作業の方が好きなんだと思います。
Q.なるほど。それは一種の「性」であるようにも思うのですが、とても編集長に向いているんじゃないかなと感じたのですがどうでしょう?「演者」よりも「プロデューサー」側が合っているというか。
A.確かに、私の自己分析になってしまっていますが。(笑) 絵画で厚塗りする技法を「インパスト」というのですが、その、こだわって厚塗りしていく感じ、ラフにざっと画を描いていくのではなく、色を乗せて厚みを増していく感じが好きなんです。「インパスト」する前の絵でも完成はしているんですが、絵の具を塗り重ねることで地層の方に厚みができ上がっていくイメージで。そこが好きなんですけど、BACKPACKERで他の人の書いた文章を添削していく作業もそれに近いと思っていて。さっきの話で言えば、「10」に広げていくような、徹底的にこだわり抜く「インパスト」の部分を手伝っていくイメージです。
Q.なるほど。では別視点で、BACKPACKERにおいて「楽しさ」を感じる部分はありますか?
A.うーん、あとは、特に文章は自分の体験なので、ある程度自分の中に種があるので、0から1とか5にする作業は自力でやらないといけないと思うんです。でも、「5から10」の作業は、いろんな人たちとの関わり合いの中でなされていくものだと思っています
。何度も話し合って、刺激を受けながら、「こだわり」抜いて、新たなものを生み、作り上げていくのが好きで、その「楽しさ」を感じています。
Q. なるほど。「やりがい」っていうと、メッセージ性というか、例えば分かり易いところで言えば「この雑誌を手に取った人が旅に行きたくなる」とか、読者を前提にしたものもあると思うんです。それよりも、BACKPACKERをこだわり抜いて作ること自体の「楽しさ」を強く感じているのでしょうか?
A.例えば、BACKPACKERを読んでくれた友達が長文で手紙をくれたり、といったリアクションはもちろんとっても嬉しかったのですが、結局どうして続けてるかといえば、自分が楽しいからなのかもしれません(笑)多分、「文章ヲタク」でもあり、BACKPACKER制作物としてが磨かれていくのがとても楽しいんだと思います。
Q.BACKPACKERの「ゴール」、今までのお話で言えば「どういう10を目指すか」って人によりけりだとも思うのですが、その辺はどのように捉えていますか?
A.そうですね。そのゴールが後輩と一致するわけではないので、そこを指摘していくことに葛藤はあります。でも、10の先を見据えて欲しいなとはいつも思っています。
Q.では、広くBACKPACKERの一員としてではなく、PC(BACKPACKERでは編集長)になってならではの「やりがい」は何かありますか?前号までは後輩に伝えたいこと、云々といった思いはなかったんじゃないかなと思ったのですが。
A.そうですね。これまでのお話にもありましたが、私自身がBACKPACKERの制作に置いて一番楽しかったのが、人と話して多角的な視点を持って、こだわりぬくことだったんです。だから、「BACKPACKER制作を楽しんでもらいたい」という思いが一番強くて、「やりがい」とは違うかもしれませんが、「制作の楽しさを伝えたい」というのは、今号の編集長と副編集長を決めた時点から明確にありました。そして私は、「こだわり」抜くことに楽しさがあると思っているので。やはり、それを伝えて一緒に作り上げることが「やりがい」でもあるのかもしれません。
Q.では、少し質問の毛色が変わりますが、BACKPACKERを制作していく上で抱いている問題意識、大変だったことはありますか?
A.新型コロナウイルスに関与した問題点になりますが、重複しますが、私には後輩やメンバーのみんなに制作の楽しさを伝えるという一番の目標があって、それを伝える上で人との関わりが大切だと思っているんです。私自身、みんなと話し合いながら制作する過程が「楽し」かったので。だからこそ、13期生(後輩)やみんなと話し合ったりする機会を大切にしたいと思っているのですが、それが中々できないのは大変ですね。作業が、楽しくなくて義務感のある「タスク」になってしまっていないか、という点には常に問題意識を持っているような気がします。本当は今号から参加してくれている13期生一人一人と向き合いたいし、色々な作業に顔を出したいのですが、現実的に難しい状況なので。
Q.なるほど。とても個人的なことですが、初めてほとんど全ての作業をオンラインで行った前号17号から参加した私に、「制作に際して義務感を感じなかったか」ということをとても気にしてくれていたように思います。今号から初めての試みとして、実際の制作作業に入る前の全体の作業会でWS(ワークショップ)をやっていましたが、そこにも、メンバーに制作の本質を見失わないで欲しい、という思いが表れていたのでしょうか?
A.何度も言うようですが、まとめると、私にとってBACKPACKERには、「こだわる」、「考える」、「話し合う」の三つが大事な要素としてあるんだと思うんです。楽しさを伝えたいという目標もこの三つに大きく関与しています。「0から5」の黙々と一人でする作業の楽しさはオンラインでもある程度感じることが出来ると思うのですが、今回編集長になって、それだけでなく、「化学反応」を楽しんで欲しい、制作を楽しくなかったと思って欲しくないという気持ちが強まったのはあると思います。
Q.では、広い質問になってしまいますが、どういう気持ちでBACKPACKERに向き合っていると言えるでしょうか?内部の制作メンバーに対しては、これまでも「楽しさを感じてほしい」という強いメッセージをお話してくださいましたが、雑誌BACKPACKERの「メディア」としての意識にはどんなものがありますか?
A.言いたいことはたくさんあって、言語化が難しいのですが…(笑)まず、今のBACKPACKERは今の社会の状況に対して2つの点で逆行しているなと思っています。まず一つめは、紙媒体であるということです。今主流のインターネットを介した情報は、その大量の情報の波にのまれてしまいますが、BACKPACKERは読者の方に実際に手に取ってもらって、ページをめくるワクワク感、インクや紙の匂いを感じてほしいと思っています。また、半年間かけて作っているのですが、半年後に発信していて即時性がなく、部数も限られている点でもインターネット上の情報の在り方とは大きく違います。でもだからこそ、制作メンバー25人で練りに練ってこだわり抜いた思考の結晶としての重みが出てくるのだと思っています。
Q.では、「時代に逆行」の二つ目は何でしょう?
A.旅ができない状況で、「開いたら、そこは、旅」っていうメッセージを打ち出し、変えていない点ですかね。今、海外に行けていた日常が非日常になってしまいました。でもだからこそ、その断片を雑誌にすることで、色々な地での出会いや体験のワクワク感などを疑似体験してもらうことが大事だとも思っています。
Q.ではむしろ、メッセージ性というか、「旅に出たくなるフリーマガジン」としてのBACKPACKERの「メディア」性は強くなっているような気もしますが、どうでしょうか?
A.はい、2020年は、「旅」が遠くて近かったように思っています。旅に行けないことで、逆に思い出とかを呼び覚ますことや、自分の中に大切に保存されている過去の旅の断片を改めて重く深く感じたんです。
Q.「発信する」ことの意義みたいなものが増している気がしますね。
A.BACKPACKERの魅力の一つに、大学生が書いている、というのがあると思っています。利益を出さなければならないわけではないので、「発信する」こと自体に重きを置けるところが好きなんです。誰かの思惑に寄せたり、方向性をいじったりすることなく、純粋な表現を発信できるところが魅力的だなと。大学生っていう時期もいいと思っています。ある程度価値観も作りこまれて、でも社会人じゃないから世界を知っているわけではない、ある種特別な時期の切り取り方、それを発信する、形にして世に出すことが大事ではないかと思うんです。
Q.なるほど。では、BACKPACKERで楽しかったこと、ピンポイントで印象的な思い出や経験があれば教えて下さい。
A.覚えていることだと、初めて自分がBACKPACKERに参加した時、自分の文章に対して「自分語りをしている」など指摘された経験は刺激的ではあった気がします。普通だったら、自分の文章を他人に読んでもらったとき、「良い文章だね」、みたいな当たり障りのないことしか言われないと思うのですが、いい顔せずに言い合う経験は初めてだったので。
Q.確かに。例えば、中高生の時の部活とかでは、「お互いのことが嫌いなわけではないけど本気で指摘し合う」、みたいな機会や経験ってあったと思うのですが、そういう経験って、大学生では自ら何かをやろうと思わないとできないですよね。
A.はい、断片でも形にして残す、発信することに、そもそも自分に対してのメリットがあるんです。自分やある旅経験を見つめ直す時間を持つことで、その経験の色々な解釈が生まれたり、その時の自分が保存されたり、「タイムカプセル」みたいな感じかもしれません。
Q.では、変な言い方ですが、「発信する」ことの、「外」に対するメリットは何だと思いますか?
A.ずっと考えていることなのですが、私自身、新型コロナウイルスによる閉鎖的な状況に置かれる中で、世界にはこんなにも色々な景色、人々がいるという当たり前のことにはっとさせられたんです。だから、BACKPACKERを読んだだけで旅をした気持ちになる、疑似体験できること、気づきを得られることは素敵なことだと思います。人間にとって、色々な世界を見たり、色々な価値観を知ることは大事だと思っているので。
Q.では、「大学生」である私たちが、思うこと、感じることを形にして残し、発信することを本当に大切に考えているのですね。
A.はい。10年後や20年後に私がBACKPACKERを読み返したとき、やはり色々と感じるところや気づきがあると思うので。「大学生の時の方が旅行してたな~」とか。(笑)
やはり、純粋に自分の赴くままに、何の商業的なしがらみもなく、自分が好きなこと、思ったことを発信することは大事だと思いますね。私の中で、「BACKPACKERはタイムカプセル」です(笑)未来の自分にも、自分以外の人にも読んでほしいです。
Q.では、メンバーとしても、編集長としても、前号までと違うことはありましたか?気の持ちようでも、実際の作業上のことでも。
A.今までは文章担当として自分の文章とひたすら向き合って入れば良かったのですが、メンバーのみんなと関わる機会が増えて、やっぱり「楽しさ」が増したかもしれません。
Q.どうしてPC(編集長)になろうと思ったのでしょうか?
A.一番はBACKPACKERが好きだったから。制作する環境を残したいと思ったからだと思います。
Q.というのは?
A.先ほどの、「こだわる」、「考える」、「話し合う」ことの出来る環境を残したかったんです。私が編集長にならなくてもBACKPACKERの制作の場は残ったかもしれませんが、あくまでも「こういう」場として残したいという気持ちが強かったんだと思います。あとは、今号(18号)のテーマになっていますが、「境界」というテーマで1号作ってみたかったというのもありますね。
「こだわり」溢れる沢山のお話を聞かせて下さり、ありがとうございました!!
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