背景なし.png

中村隆介監督作品 関連記事②

​コロナ禍の生活支援

コロナ禍と在日クルド人の生活

20年近くクルド人コミュニティの支援を続けてきた、「クルドを知る会」の松澤さん。苦しい生活を続けてきた仮放免の人々であったが、コロナ禍の到来により、その生活はさらに厳しいものになっているという。

–––––––– コロナ禍での在日クルド人の状況について教えてください。

コロナ禍で出てきた大きな違いの一つといえば、仮放免の人たちはそもそも在留許可がなくて、住民登録とかがされてないんですよ。だから10万円の給付金も受け取ることができなかった。そういうことに対して、私たちも総務省に意見書とかを出すんだけど、「検討します」としか返ってこない。仮放免の人たちは仕事が禁止されているから、多くは友人とか家族に生活を頼っている状態で、そうしたわずかな支えもコロナ禍では厳しくなってきている状態でね。そもそも、給付金っていうのは外出自粛の中で家計が苦しくなった人たちを支援するため作られたものなんだけど、そこから仮放免の人たちは排除されている。つまり、彼らは日本にいない人々ということになっているんですよね。もともと国には帰れないし、コロナでさらに帰れなくなっている状況なんだけど、そういう人たちに社会保障がなされない。まずその日を生きていくっていうことが大変な人たちがたくさんいると思うんだけど、なかなか社会の目は彼らには向かわなくてね。

そうした一人一人の表情を大切にしない社会っていうのが、危険な状態になっていくのは時間の問題なんじゃないかなと思いますね。

松澤さんが率いる「クルドを知る会」はコロナ禍でも引き続き、精力的な活動をしている。従来の生活相談活動などに加え、今年の5月〜10月にかけては仮放免の人々への現金給付活動を他団体と連携する形で行っていた。一人当たり3万円を支給するこの活動で1645人の外国人(その内クルド人は597人)への支援を実施したものの、生活面での課題は依然として山積している。

困窮する外国人たちと行き届かない支援

そうした状況の中、11月1日埼玉県川口市のJR川口駅東口でクルド人を中心とした外国人に対しての大規模な生活支援活動が実施された。多くの支援団体が参加する中、松澤さんら「クルドを知る会」もこの支援活動に参加し、生活に困窮する外国人の支援を行った。

埼玉県川口市JR川口駅東口

キュポ・ラ広場にて

「生活」、「医療」、「法律」など、内容ごとにテントが分けられている。ボランティアが受付で相談内容を聞き取り、会場に訪れた外国人たちはそれぞれ該当するブースに振り分けられていた。14団体ほどが参加し、多方面からの支援が行われていた。

–––––––– 11月1日(日)に実施された「生活や仕事に困っている外国人ための相談会」についてですが、この活動に至る経緯、また見えてきた成果と課題を教えてください。

ああいう規模でね、大々的に活動をするって言うのは今までなかったことですね。集まった支援団体も外国人の状況については、新聞報道とかで知ってるんだけど、中々実際に相談活動をしたことがないって言うんで。それじゃあ普段から外国人たちの生活相談をしている「クルドを知る会」の活動の延長線上に持ってこようという話になったんだよね。大体14団体くらいが参加して、大規模な相談活動になりましたね。

活動の成果って言うと難しいけど、課題はたくさん出ました。まず通訳不足の問題。150~300人近い人たちが参加して事情を説明するってことが、どの団体にとっても初めてのことで、中々難しい部分がありましたね。相談に来る外国人たちがあまりにも困窮していたり、医療についての知識がなかったと言うことと、それに対する対応がどうにもできなかったって言うのが課題。

今回参加した団体も、外国人たちが生活のなかで問題に直面していると言うことは知っている。ただ、実際に接触する人は少なくてね。やっぱり一歩を踏み出すのが怖い。素性が分からなくて不安が強いって言うのがあるんだよね。実際に話すとみんな状況が違いすぎちゃって、戸惑うんだけど、まずその違いを知るって言うことが支援の一歩でね。一括りで考えたい気持ちはわかるんだけど、100人相談に来れば100通りの答えが返ってくる訳で。それに直面すると混乱してみんな自分の能力不足だと思っちゃって、支援を諦めちゃうんだけど、それが一番危ない。その違いすぎることを認めること。そうした出発点に立つことが大事で、あとは支援をひたすら続けていくことしかできないんじゃないかなと思います。

筆者である私もこの活動にボランティアとして参加した。その中で出会った一人のイエメン難民の男性の生活はかなり苦しいものであった。難民申請をしたものの認定を得られなかった彼は、就労を許されず現在2年近く家賃を滞納していると言う。日本語を話せず、情報交換をするコミュニティを持たない彼には支援の手が届きにくい。彼のような人々を支援するには、やはりSNSなどでの大規模な発信活動が必要なのだろう。

一方で、会場内で出会った一人のボランティアの方はSNSでの広報にも落とし穴があると述べていた。外国人への支援活動を行っていると、活動の情報を聞きつけた一部の人が会場に訪れ、時にヘイトスピーチなどを浴びせることがあるのだと言う。それを危惧し、この日も個人的には広報を控えめにしていたそうだ。

助けを求めて相談会にきた人々が逆にヘイトにあってしまう。SNSでの告知には、そうしたリスクも存在している。

支援の手を伸ばしていく試みの中には、この他にも多くの困難が生まれてしまうという。今回の活動を経て垣間見たのは、決して一筋縄ではいかない外国人支援現状であった。

次回のWEB記事では、20年間の支援活動を経て松澤さんが感じたことを切り口に、共生が叫ばれる現代に対する、松澤さんの考えを紐解いていく。