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【あじさいプロジェクト】大熊町聞き書き活動 オンライン放射線講義

最終更新: 6月14日



作家の塩野米松さんによる「聞き書き手法に関するオンライン講義」に続いて、昨年9月、環境省の復興担当調整官による「オンライン放射線講義」を受講した。


講義は、放射線に関する基本知識の講義、放射線実験キットを用いた実験、放射線量の測定の3部構成で行われた。オンラインでの講義だったため、事前に実験キットと講義資料、放射能測定器を学生の各家庭に送っていただき実験をしながら講義を受けた。




1.放射線に関する基本知識の講義


まず、放射線に関する基本知識を学んだ。以下では、その一部を紹介したい。



◆放射線とは?


放射線とは「不安定な状態の物質(放射性物質)が別のより安定な物質に変化するときに放出される粒子や電磁波」のことだ。α線、中性子が陽子に変換される過程で放出されるβ線、他の放射線と一緒に放出されるγ線などに分類できる。

ニュースでもよく耳にする放射線の単位についても学んだ。

放射能(放射性物質が放射線を出す能力)の単位はベクレル(㏃)、放射線が物質に与えるエネルギー量(吸収線量)の単位はグレイ(Gy)、放射線が物質に与えるエネルギー量を人体への影響の程度で補正した値がシーベルト(㏜)と呼ばれている。

それぞれの単位の呼び方は放射線の研究に尽力された研究者の名前だそうだ。



◆原子力発電のメカニズムと身近な放射線

「核分裂した際に減る質量がエネルギーとなり、熱が出る」ことが原子力発電所のメカニズムだ。例えば、1kgのU-235(ウラン)が核分裂を起こすと重さが約1g減る。その時の熱量は、なんと石油200万㌧分に値するという。原子力発電のほか、X線診断・CTスキャンなどの医療、夜光塗料や煙感知器等の生活、微量分析や年代測定の分析等、放射線は私たちの身近なところで多岐にわたって利用されている。


◆自然放射能由来の年間被ばく




「被ばく」という言葉に皆さんはどんなイメージを持つだろうか。原爆によって大量に被ばくするイメージが強いかもしれない。しかし、私たちは日々自然放射能由来の被ばくをしている。

被ばくは「内部被ばく(食べ物や呼吸による身体の中側からの被ばく)」と「外部被ばく(大地や宇宙からの被ばく)」に分けられる。自然放射能由来の年間被ばく線量は、内部被ばくが1.47m㏜、外部被ばくが0.63m㏜だそうだ

一方、医療による被ばくもある。日本人はCTスキャン由来の医療被ばくによる発がん率が他の国に比べて高いという論文(Lancet 363, 345-351,2004)があること

を知り興味深いと思った。


そのため、空間線量率という概念がある。場所によって大きく異なるのが特徴だ。例えば、花崗岩には、ウラン系列、トリウム系列、カリウム-40などの放射性物質が含まれているため、線量が高くなるという。放射性物質を含む岩石等の影響でイランのラムサールやケララの空間線量率は、日本の数倍から10倍以上になるという。


私たちが2019年秋~2020年に訪れた大熊町の空間線量率は0.11μ㏜/hだ。この数値は岩盤が花崗岩で構成される神戸市の空間線量率と変わらないレベルである。




2.放射線実験キットを用いた実験

続いて放射線を見るため、放射線が飛行機雲のように肉眼で見える「霧箱」と呼ばれる実験を行った。右の写真中央に見えるピンク色の物は岩石からできたネットであるが、この岩石から出る放射線(正確には放射線が通った跡)を肉眼で見ることができた。





3.放射線量の測定

そして、実際に放射能測定器を使って部屋や家の周りを測った。放射能は地面に近いところの方が高いため、家の中より屋外の地面近くの方が実際に数値は高かった。



この講義を通して、放射線に対する漠然とした恐怖が払拭され、冷静に原発事故の被害をとらえたり、ニュースを深く理解したりすることができるようになった。また風評被害について、どのように正しい知識を広められるのかを考えていきたいと思った。さらに、「日常生活と放射線」についての知識を深めることで、福島の放射能汚染に対する正しい理解をできるようになりたいと思った。


新型コロナウイルスの感染拡大により、大熊町に足を運べない状況が続いている。実際に行けるようになったら、線量計をもって空間占領率をはかりながら、大熊町と放射線について考察してみたいと思った。



【ライター:塚原千智】


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次回から、昨年度の大熊町の聞き書き活動の記録をお届けする。

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[文献情報]

Amy Berrington de Gonzalez and Sarah Darby, Risk of cancer from diagnostic X-rays: estimates for the UK and 14 other countries. Lancet, 363, 345-351, 2004.


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